不動産投資失敗のリスクとその回避方法

不動産投資は、価格変動が少なく、毎月安定した家賃収入が入ることから、株式投資やFX取引など他の投資と比べて、「リスクが低い」と一般的に言われています。
その一方で、「不動産投資で失敗した」や「不動産投資で儲けがでない」などの話も聞いたことがあると思います。
物件や収支を見誤ったなど、不動産投資で失敗している人の多くはそのリスクを考えずに運用していたケースがほとんどです。
ここでは、不動産投資を失敗する人が陥るリスクと、その回避方法について紹介していきます。

不動産投資失敗のリスクおよび原因

運用面でのリスク(収入減)

✔空室リスク

入居者が退室後、すぐに次の入居者が見つからず、空室となるリスクがあります。
ある事例ですが、購入費用の安さと利回りから、郊外の築古のワンルームマンションを購入しましたが、前の入居者が退去してから数か月間空室のままとなり、家賃を大幅に下げてやっと入居者が決ったというケースもあります。
上記のように、入居者がいなければ当然ですがその間は家賃収入が入ってこないため、当初想定していた利回りが低下していくことになります。

✔家賃下落リスク

築年数が経過すると、家賃も併せて下落していきます。

「経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」(株式会社三井住友トラスト基礎研究所)(2013年1月16日)

上図のレポートによれば、経年による家賃の下落は年率に換算すると平均して1%程度となっており、特に築3年~築10年の下落率が大きいことがわかります。

✔家賃滞納リスク

家賃滞納リスクとは、入居者が家賃を滞納するリスクです。
家賃が滞納されてしまうと、収入が入ってこないばかりか、回収できないリスクにもつながります。
また、滞納された家賃は会計上未収金扱いとなり、支払いがされていなくても税金の支払い対象となるため、回収できない場合は、大きな損失を被ることになります。

✔不動産価格(地価)下落リスク

不景気や人口減少等により地価が下落することで、購入した投資用不動産の資産価値が下落するリスクがあります。

経済面でのリスク(支出増)

✔金利上昇のリスク

不動産投資ローンを変動金利を選択している場合、固定金利に比べて金利が低い反面、金利上昇に伴う返済金額の負担が大きくなるリスクがあります。

建物損壊のリスク(支出増)

✔災害リスク

地震、火災、水害、風災、雪災、台風などの災害で、物件に被害を受けるリスクがあります。
その回避策としては、火災保険や地震保険などに加入することですが、保険を充実させてしまうとランニングコストが膨らんでしまいます。
一方、火災保険や地震保険などに未加入の場合、すべて自費で補修しなければならず、仮に建物が全壊した場合は、ローンだけが残ってしまいます。

✔老朽化による修繕リスク

建物は年数が経つにつれ古くなり、設備も老朽化していきます。
例えば、エアコンや給湯器は約10年~15年ごとに交換したり、その他の設備を補修するなど、老朽化に伴う修繕費用を見込んでおかなければなりません。
さらに、当初の想定よりも早く老朽化が進んだり、修繕費用が想定以上にかかってしまうケースもあり、収支計画どおりにいかない場合も想定されます。

不動産投資で失敗する人の特徴

  • 不動産投資は賃貸「経営」との認識が不十分

不動産投資は、「投資」に分類されていますが、実際には事前の市場リサーチや入念な収支計画に基づき物件を購入し、購入後も、空室率を減らすための管理・運営を行っていくなど、「経営」に係る知識・ノウハウが必要となってきます。
不動産投資はさまざまな知識が必要なため、楽をして稼ぐことはできません。
不動産投資で失敗をする多くの人は、知識やノウハウが足りていないことがほとんどなのです。

  • 購入後の収支シミュレーションが甘い

物件購入後の収支や経費などのシミュレーションが甘い人が不動産投資に失敗するリスクが高くなっています。
また、表面上の利回りだけで、金利や空室率など様々なパターンを想定しないで、判断しているケースも多いと思われます。

  • 経費削減のために自分で管理しようとする

集金管理や問い合わせ対応、清掃などの日常業務を経費を安くするために、管理会社に任せずに自分で行おうとする人がいます。
これは、不動産投資の失敗のリスクでご説明した「家賃滞納リスク」を高めてしまう恐れがあることからおすすめしません。

不動産投資失敗のリスクを回避するための方策

需要と魅力のある東京23区の物件を選ぶ

株式会社三井住友トラスト基礎研究所が2020年3月に発表したレポート(賃貸マンション市場レポート「東京 23区においては台東区や品川区で賃貸への潜在需要が高まってきている」)によると、大都市圏における賃貸マンション賃料(連鎖型・総合)は、賃貸需要のメイン層とみられる 25-44 歳の転入超過率を高水準の人口の転入超過率を背景に、東京 23 区と大阪市において特に堅調となっています(図1)。
さらに、レポートを見ると東京23区の中でも、賃料水準が割安で都市部へのアクセスが良い台東区や品川区の賃貸需要が高まってきています(図2)。
以上から、物件を選ぶ際は、今後も需要が見込まれる東京23区を選ぶと失敗が少ないと思います。
一方で、地方の物件は高齢化や過疎化が進んでいる地域も多く、空室のリスクが高い傾向があるため、選ぶことは避けましょう。

図1および図2の出所)総務省自治行政局「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」、総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」を用いて三井住友トラスト基礎研究所作成。
注)転入超過数は日本人のみを集計。

駅近、複数路線の物件を選ぶ

東京23区では、車を所有していない人も多いことから、芋な移動手段は電車となり、駅から近い物件のニーズが多くなります。
そのためには、東京23区で駅徒歩10分以内、できれば5分以内の利便性の高い物件を選ぶことが重要です。
また、通勤や通学に便利なターミナル駅にアクセスがいい、複数路線が利用できる利便性の高い駅はよりニーズが高まります。
アクセスの良い駅に近いほど、物件の価格が高くなるため、初期投資額が大きくなってしまいますが、ニーズが高いことから、空室リスクが下がるだけでなく、家賃設定も高くすることができます。
さらに、スーパー、コンビニエンスストア、ドラックストア、コインランドリーなど、生活に必要なものが揃っている施設が徒歩圏にあることも入居者のニーズに応えることになります。
ニーズの高い物件は、売却時の価格もより値崩れしにくくなるため、将来に渡って高い賃貸需要が見込め収益性が維持でき、資産価値を維持することができます。

中古ワンルームマンションを選ぶ

東京23区全ての区において、マンション開発を規制する条例や建築指導要領が定められており、25㎡未満のワンルームマンションを新規に建設することが難しくなってきております。
また、下表のとおり単独世帯数も年々増加しており、今後も、少子高齢化や婚姻率の低下により、ファミリー世帯の減少、単独世帯の更なる増加が予想されています。

以上のように、東京23区においては、単身居住者の需要が見込まれており、ワンルームマンションの需要はますます増加すると考えられます。むしろ、規制のため新規物件が十分でなく、将来的には供給不足となる可能性が高いです。
以上のように、ワンルームマンション規制により、将来的に東京23区のワンルームマンションは供給不足となる可能性があります。
一方で、東京23区においては、単身居住者の増加によりワンルームマンションの需要が見込め、ニーズが高ければ、空室リスク、家賃下落リスクも低くなり、安定したマンション経営を行うことができ、資産価値も維持することができます。

入居者のニーズの低い物件は避ける

次のような物件は空室になるリスクが高いため、避けるべきです。
① 3点ユニットバスである(トイレ・バス別が望ましい)
② エレベータがない
③ エアコンなどの必須設備がない
④ 居室が和室である
⑤ 築年数が古いのに家賃が高く設定されている(次回の契約更新時に家賃が大幅下落する可能性がある)
逆に、次のような設備がある物件は入居者のニーズが高く、空室リスクも低くなります。
⑥ オートロックでセキュリティ対策がとられている
⑦ 宅配ボックスがある

収支シミュレーションを立てる

物件の概要で目に付くのは「利回り」ですが、この想定利回りは、ほとんどの場合「表面利回り」となっており、諸々の費用は含まれていません。
そこで、想定家賃のほか、定期的に必要となる給湯器やエアコンなどの設備費、マンションの修繕積立金や管理費、固定資産税などの諸経費など、収入と支出のシミュレーションを立てて、空室リスクや家賃下落リスク、金利上昇リスクなど、想定されるリスクを盛り込んだ上で検討していくことが重要です。

不測の事態に備えて自己資金を用意する

不動産投資では、毎年納付する固定資産税の他に、給湯器やエアコン交換などの設備費や、入居者が入れ替わる都度かかるクリーニング代、入居者募集時の広告費、マンションの大規模修繕工事の際の不足分を補う追加の修繕費、固定資産税など、様々な経費がかかることが予想されます。
これらの費用はいつ発生するかわからないものもあり、不足の事態に備えて資金を積み立てておきましょう。

安心して任せられる賃貸管理会社を選ぶ

購入した物件の管理は、入居者募集から、トラブル対応まで、自己管理を行うとなると、大変な手間がかかります。
また、所有する自宅から離れている場合や複数物件を所有している場合は、自分で管理することは難しいでしょう。
そこで、入居者募集やクレーム対応などの賃貸管理を安心して任せられる信頼できる賃貸管理会社を選ぶ必要があります。

信頼できる営業担当者を見つける

不動産投資を成功させるためにも、信頼できる営業担当者を選ぶことは大切です。
営業担当者は、不動産投資のパートナーとして、購入前だけではなく、購入後もフォローや相談にのってくれる人がいいでしょう。
また、不動産投資のメリットだけではなく、きちんとリスクやデメリットを説明してくれる、顧客本位の営業担当者を見つけましょう。